2022年12月4日、コレクティブ・コネクトは、サークル等で社会活動に参画されている大学生の皆さんと、ワークショップを行いました。
わたしたちコレクティブ・コネクトは、おもに企業人と将来世代の交流を通じて、お互いが取り組んでいる社会課題への理解を深め、ともに社会を変えていくことを目的としています。
今回はその一環として、サークル等で自主的に社会課題解決に取り組んでいる将来世代のみなさんと、日本で社会や未来を変えるための活動をする「チェンジメイカー」を増やすためのアイディアを話し合いました。
参加いただいたのは上智大学環境保護サークル Green Sophia、金沢大学 Wanna Be Me、金沢大学 わこころ、福島大学 にじいろサークルのみなさんです。
「チェンジメイカー」とは、「社会や未来のための活動」を行っている人のこと。
つまり考えているだけではなく「行動している」人ということになります。
海外と比較して、日本では残念ながら「チェンジメイカー」の比率は低いといわれています。では、どのようにこれを増やすことができるのか? について、みんなで話し合いました。
まず最初に、参加していただいたみなさんから「良いと思ったSDGs関連の商品やサービス等」について話していただきました。
おもに例として、「製造過程での環境や人権配慮が感じられるもの」がたくさん挙げられました。
-天然素材を使い、社会福祉法人施設との連携も行っているコスメ「CLAYD」
-再生可能な容器と間伐材の箸を使用した大学のお弁当
-捨てられてしまう野菜を再利用した「おやさいクレヨン」
-違法銃器を溶かしてつくられた金属素材「Humanium」
-同性パートナーシップ制度
-障がいを持つ方が作業所で作ったクッキー
-ヴィーガン対応の学食
などが挙げられました。
また「それらを誰かに伝えたか」については、家族と話題にした、SNSでポストしたほか、友人のプレゼントにあげた、友人にすすめた、などの体験が見られました。
社会課題に取り組む商品やブランドは、親しい友人へのプレゼントなど、ある程度価値観を共有できている相手とは「語り合える」要素となりそうでしたが、その反面、「意識が高い」といわれそう、といった意見もありました。
それがより顕著だったのは「伝えなかった人・伝えたけど反応がなかった人」について話し合った時でした。
-ヴィーガンフード:家族に伝えても反応がなかった。値段だけ気にされる
-フェアトレードチョコ:実際に会場で販売をしたのだが、
「高い」「ふつうのチョコでいい」と言われた
-プラスチックストロー:バイト先でストロー廃止を提案したが相手にされなかった
(その後。必よな人にだけ出すことにしてもらった)
-PET飲料のキャップ:バイト先で集めることを提案したが「意味があるの?」と言われた
(その後、分別は続けてもらった)
などなど、実際に行動している方々だけが感じている世の中とのギャップは、リアルです。
そこには「意識が高い」ということがあまり良い意味で使われていない、冷笑的な価値観が蔓延している現状が感じられます。
これらを話し合った後、いよいよ2チームに分かれてのワークショップを実施しました。
ワークは、これまでの意見やそれぞれの経験をふまえ、「誰に、どういうきっかけを作るとよいか」と「伝え方、巻き込み方のアイディア」を出し合う、という流れで実施します。
チームAは「興味はあるけど何をしたらいいかわからない人」はきっと多いはずだ、という仮説から議論を始めました。
調査などでも、若年層(将来世代)は上の世代と比べて、社会課題に興味を持つ人の割合が高いとよく言われています、
ただし、興味はあっても行動までには至らない人も多い、ではどうすれば? という問いに対して、「好きなことや人から影響を受ければ」行動につながるのではないかという仮説に至りました。
自分たちの経験も踏まえて「推し」の発言や行動をきっかけに、社会のことを考えたり、行動したりするということがあるという気づきから生まれた仮説です。
「誰が言うか」という要素は、SNS時代のコミュニケーションにおいて非常に重要な要素であるということをあらためて感じるような結果のように思います。
たしかに、「推し」の行動がネット上で波及し、さらに現実の行動につながっていくというムーブメントは、とくに海外においては非常に顕著です。
アーティストRihannaが「どんな肌の色の人も使える」インクルーシブなビューティブランド「Fenty Beauty」をローンチし大きな支持を集めたように、影響力を持つ人が人々の行動に影響をおよぼすということが増えてきています。
その背景にはソーシャルメディアなど、だれもが「自分の意見」を表明できる場が整ったことも無関係ではないでしょう。
あくまでも「広告のキャラクターとして」の発言ではなく「個人として、本心からの」の発言であることは、いま、世の中を動かすうえで非常に重要な要素ではないかと思います。
企業側としては、広告のように「企業の言いたいことをタレントに言わせる」のではなく、同じ志を持つ人を見つけ「その人(タレント)が言いたいことを支持・支援する」という考え方に切り替えていく必要がありそうです。
そのひとつの事例として、高級ジュエリーブランドのブルガリがNGOのセーブ・ザ・チルドレンと共同で上市した「#GIVEHOPE」を紹介したいと思います。
このジュエリーの収益は、セーブ・ザ・チルドレンを通じて世界中の紛争や災害、貧困に直面した子どもたちを支援するための活動費として寄付されるのですが。この広告に多数のセレブリティが出演しています。とにかくすごいメンツで出演料がすごそうなのですが、セーブ・ザ・チルドレンの人に聞いたところ、出演者はみんな無償で参加しているそうです。
みんなが賛同できるような大義(パーパス)を掲げ、実際に収益を寄付するという行動も打ち出していることが共感を生み、企業とタレント、お互いのメッセージとして社会に発信することができた良い事例だと思います。
さらに「伝え方・巻き込み方」として、アイドルなど多くファンを抱える人からの呼びかけがあれば、ファン同士の自主的な行動が活性化し、さらにグッズやライブ、ライブ会場周辺への波及など、より社会全体を巻き込んでいくようなムーブメントが生み出せるのではないか、という意見がありました。
エージェント制が主となる欧米と違って事務所の影響力が大きい日本では、今のところタレント本人がムーブメントを仕掛けるという動きが見られにくいという側面がありますが(先に挙げたブルガリも欧米の事例)、SNSでの発信力がますます重要になる中、壁を打ち破るような事例が生まれてくることを期待したいと思います。
また、もうひとつのチームからは「流行に敏感な人」「何か新しいことを始めたい人」とコミュニケーションするといいのではないかという声が挙がりました。
まわりの空気に敏感で、いい意味で流されやすい、楽しいことを始めたいという気持ちが強い人をターゲットに、ただ自分たちのことを話すのではなく、子どもや自然、食など、その人が興味のある話からつなげてみるといいんじゃないか、という提言です。
この話を聞いていて、確かに企業の言うコミュニケーションとは「言いたいことを言う」だけになりがちな部分があるな、と思いました。
そもそも大半の広告は「言いたいことを言う」ためだけにあります。受け手にできることは黙ってスキップする程度です。
しかし、良いコミュニケーションは本来「相手の聞きたいことを言う」ことによって成り立つものであり、そのためにまず相手を知ることからはじめないといけないのだな、と改めて感じました。
興味のある部分から入る、という意味で「動物」が好きな人は多いと思います。
ソーシャルメディアでも猫や犬の動画はとても再生数が多いですし、企業の広告にもたくさんの動物たちが登場します。
ある調査によると動物は企業広告の約20%に登場するらしいのですが、人間のタレントと違って動物は適切な報酬を受けていないのではないか? これを変えようと提言したのがペットフードも手掛ける食品会社Marsでした。
「THE LION’S SHARE」というこのキャンペーンは、動物たちが本来受け取るべき報酬を受け取っていないという主張を行いました。
そして動物の画像や動画を広告に使用した企業がメディア費の0.5%を保護基金として寄付しようと呼びかけることで、乱獲からの保護や野生動物生息地の保全などの活動のための基金として、およそ12億円の寄付を集めたといわれています。
(ちなみに「LION’S SHARE」は慣用句としては「(分け前の)大部分」という意味があります。不当に分け前を多く取った人を非難するときに使われるこの言葉で、ユーモアを交えて社会批判をしています)
また、興味関心から行動につなげた例として、メキシコで開催された「The HAIRFEST」というイベントをご紹介したいと思います。
メタルバンドが集結する音楽フェスの入場料は、なんと髪の毛、つまりヘアドネーションでした。
確かにメタルファンと言えば髪が長いイメージがありますから、ヘアドネーションには最適かもしれません。
子どもがん患者支援団体が仕掛けたこのイベントにより、メタルファンを中心に1日でウィッグ107個分の髪の毛が集まったということです。
参加者にとっては、大好きな音楽が子供たちのために寄付するきっかけになる。という、とても素敵なイベントだと思います。
今回のイベントを通じて、あらためて感じたことは、もはや社会人と学生の間に知見の差はなくなりつつあるな、ということでした。
学生のみなさんの中にはイベントを立案して実行したり、企画して物販を行ったり、関心の薄い人に参加を呼びかけてみたりといった、挑戦したことのある人間しか得られない体験を持っている方がたくさんいます。
社会人には、業務の経験は豊富なものの、ミッションは所属している組織から与えられることがほとんどです。自分のやりたいことを1から立ち上げるという経験とは微妙に異なります。
また、自主的に社会課題に取り組まざるを得ない人たちの中にはその問題の当事者もいます。その考えの深さや経験から得られる思いの強さは、課題解決にとって欠かせないものです。
将来世代は社会課題への関心が高いと言われています。
しかし実際のところ世代だけで語るのは少々乱暴であり、上の世代とまったく同様に、その関心にはグラデーションがあるというのが実態です。
そもそも社会課題は様々な理由により「見過ごされてきた」から残っている課題であり、その解決は簡単なものではない。
それに挑むのが「サステナビリティ」だとするのなら、そこには世代関係なく「取り組んできた」ことを共有し対話しあう場が重要だと、わたしたちは考えています。
わたしたちコレクティブ・コネクトは、企業人と将来世代の交流を通じて、お互いが取り組んでいる社会課題への理解を深め、ともに社会を変えていくことを目的としています。
SDGsやESGという言葉がメジャーになり、社会課題解決に取り組む企業は年々増加していますし、これからもその傾向は変わらないと思われます。
企業が取り組む社会課題解決にはたくさんの種類があり、どれも一筋縄ではいかないものばかりです。
そして基本的に、コストがかかるものです。
コストをかけるからには、価値伝達が重要になります。
社会全体にその価値を認めてもらい、企業といっしょに社会を変えていく「チェンジメイカー」候補となる人たちを増やし、まわりの人に影響を与え行動を変えていくことが求められていると思います。
これからの社会を担う将来世代との対話は、その糸口をつかむうえで重要な示唆を与えてくれるものと思います。
社会課題に取り組んでいる将来世代との対話を検討されたい企業のみなさんは、ぜひ一度気軽にご相談いただければ幸いです。
また、対話やイベントに参加してくださる将来世代の皆さんも随時募集しております。
ぜひ、collectiveconnect001@gmail.comまで、お気軽にご連絡ください!