コレクティブ・コネクトは株式会社 大丸松坂屋百貨店さんが定期的に実施されていらっしゃるサステナビリティ勉強会に講師として参加させていただきました。今回はこの勉強会を企画・運営している同社の株式会社 大丸松坂屋百貨店 経営戦略本部 経営企画部 サステナビリティ戦略担当の杉山 祥子さん、池本 飛雄馬さん(いずれも当時)にインタビューのお時間をいただき、同社のサステナビリティに関する考え方や施策、勉強会の趣旨や感想などをお聞きします。
まず、大丸松坂屋百貨店が取り組まれているサステナビリティ活動について教えてください!
大丸松坂屋百貨店では環境や社会へのアクションを「Think GREEN」「Think LOCAL」というコミュニケーションワードを使ってすすめてきました。
「Think GREEN」(環境への取り組み)の文脈の代表的な事例は、「エコフ」という衣料品回収活動です。不用になった衣類などをお客様からこれまでに500万点回収してきました。
「Think LOCAL」(地域共生の取り組み)の文脈では、全国各地域に店舗がある当社の特長を活かし、地域の皆さまと一緒にその地域の良さを探求し、盛り上げていく活動をしています。
どちらの活動も各店舗がお客様と一緒になって取り組んでいくことを大事に考えています。
わたしは高知県で生まれ育ったのですが、町の中心に大丸のデパートがあって小さいころから何度も何度も通いました(笑)
そういうこともあって百貨店にはたくさんの思い出があります。
お話をお聞きして、たしかに百貨店というのはある意味地域のシンボルのようなところがあって、片方が元気だともう片方も元気になるというような強い相互作用があるような気がします。百貨店を中心に地域を盛り上げていくようなことも求められてくるのでしょうね。
地域のお客様との接点はとても大事にしています。
各店舗ごとに工夫して取り組んでいく部分が大きいですね。
そんな地域との結びつきが強い大丸松坂屋百貨店にとって、LGBTQなど性的マイノリティについての理解を深めることには、どのような意義がありますか?
まず社内においては従業員の個性を生かす・認めることが重要だと考えています。性的志向だけでなくいろいろな個性、多様性をもった従業員が自分らしく働ける、自分が自分らしくいられる会社でありたいと思います。
そのために全従業員がLGBTQの理解を深めることが重要と考え、今回の勉強会につながっています。
もちろん店舗にもたくさんのお客様がいらっしゃるので、みなさんに楽しくお買いものをいただけることが重要です。従業員の理解が深まることで接客にも良い影響があるのではないかと期待しています。
投資家の方々からもダイバーシティの観点で評価されますので、結果的に「PRIDE 指標」などでゴールドを取得できたことは良かったと思います。
ホールディングスのJ.フロントリテイリングとしては、性別変更休暇を認めるなどかなり先進的な取り組みをされていらっしゃるように思いますが、このような制度面での改革はどのように進められたんでしょうか?
性別変更休暇などの制度はJ.フロントリテイリングが制度設計を行い全グループに広げているのですが、もちろん最初は制度がないので調べるところから始めています。
特に担当者が熱意をもって取り組んでくれて、他社の取り組みを調べてどのように取り入れるか、この制度をこのように変えれば実現できるのではないかなど、知恵を絞ってくれました。その結果だと思います。
なるほど、ありがとうございます!
大きな会社でも担当者の熱意で動く部分があるということですね。ただ、多くの企業ではLGBTQに取り組みたいが、何をしていいかわからないという声も多く聞かれます。これまで社内でLGBTQなど性的マイノリティについての理解を深めるために有効だと感じた取り組みなどあれば教えてください。
上述の通りで性別変更休暇などの制度を作ったとき、全部のマネージャー研修にダイバーシティ研修を導入してもらえたんです。
そのとき人事が社内の相談窓口も作って、LGBTQ当事者の方も含めて何か相談がある人はいつでも相談をできるようにしました。
LGBTQ関連の研修は3年前くらいから取り組んでいるのですが、そのきっかけとしてはある店舗でトランスジェンダーのお客様に向けた下着の販売会など、当時はまだ前例のなかったことに積極的に取り組んでいたメンバーがいたということがありますね。
それ以降、各店舗で連携して従業員が自主的に勉強会を開く、という取り組みがなどもあり、参加者には好評だったようです。
従業員の方が自主的に考えて研修をするというのは素晴らしいですね。今回我々が参加させていただいた放課後勉強会もその一つかと思いますが、この勉強会が始まった経緯やこれまでの内容などについて教えてください。
放課後勉強会自体は3年前に始まりました。
当時、全社的にサステナビリティを推進するにあたり、まずは従業員の理解を得ていくために、真面目な話だけじゃなくいろいろな視点でやるということでスタートして、これまで約半期に2回ずつ、計12回実施しています。
最初はいわゆるCSV、本業を通じて社会課題を解決して事業成長しようということで、ソーシャルグッドな事業活動のヒントを得ようというテーマがありました。
今はそれに加えて、これから世の中でキャッチしておかないといけないこと、たとえばアンコンシャスバイアスやダイバーシティのようなテーマも含めて広く扱うようになっています。
放課後勉強会にてCOLLECTIVE CONNECTがお話させていただいたことへの率直な感想などありましたら、ぜひお聞かせください
会社の中で LGBTQに関する話題は人に聞きにくいし、そもそもだれに聞いたらいいかわからないことがあるのではと思っています。
今回は当事者の経験に基づいたお話としてそれを聞けたことが良かったと思います。
最後に「これから行うワンアクション」を考える投げかけもあり、聞いてくれた社内のメンバーも、自分で何ができるか考えるきっかけになったのではないかと思います。
司会の方が当事者の方にインタビューするというラリー形式は勉強会では初めての試みでしたが、事前アンケートの結果も含めてふだん従業員が疑問に思っていることを聞いてもらえたのが良かったのではないかと思います。
特にアウティング、実際にカミングアウトを受けたときにどう行動すべきか、どこまで話していいかというような話はこれまでの研修であまり触れられていなかった部分だったので、そこを深く聞けたのもよかったですね。
ありがとうございます。
自分自身、所属している企業でLGBTQ研修を受けたことがあるのですが、どうしても知識など表層的な話が多く、違和感がありました。
当事者以外の人は知識として知っていても、なかなか行動を変えられないものだと思っています。セミナーの中でお話したのですが、月報の中でさらっとカミングアウトしたところ上長判断で削除されたことがありました。上長はよかれと思ってやってくれたようですが、本来はまず対話ができればいいのではないかと思います。知識だけではなかなか変わらないことを、これから少しでも変えていければと思っています。
最後に、サステナビリティ領域でこれから取り組みたいことがあれば、ぜひ教えてください。
今回実施したような研修も、各店舗をまわって参加者を増やすことができるといいなと思います。また、グループではブライダル事業なども手掛けているのですが、そういう事業も含めて、現場の課題感を吸い上げていきながら、グループ全体のDE&Iを進めていきたいです。
ダイバーシティ、多様性の尊重という意味では、まだまだ意識を変えていかないといけない部分もあるような気がしています。たとえばサステナビリティに関しても女性管理職比率というものがあったりしますが、そもそも男女の2項対立でもなく、もっと性別も含めてグラデーションの部分も考えて尊重できるようになっていくといいと思います。
ダイバーシティというと、その人はその人、私は私、という話で終わりがちなところがあるように感じています。インクルージョンの視点と行動こそが大事だと思っています。
本日はお忙しい中ありがとうございました!
私たちもこれを機会にまた新しいご提案ができればと思っていますので、引き続きよろしくお願いいたします!!