マインドマップでサステナビリティ用語解説 「生物多様性とネイチャーポジティブ」

日本政府は3月31日、「生物多様性国家戦略2023-2030」を閣議決定しました。
これは2022年12月に生物多様性条約第15回締約国会議(COP15)で採択された「昆明・モントリオール生物多様性枠組」を受け、日本政府として対応方針をまとめたものです。

生物多様性国家戦略(環境省サイト)

生物多様性とは、地球上に存在する生物の多様性のことです。例えば、動物や植物、微生物など、生物の種類のことです。

生物多様性が重要な理由は、以下の通りです。

生態系のバランスを保つために必要:生物はそれぞれが生態系の中で重要な役割を果たしています。例えば、植物が二酸化炭素を吸収して酸素を出すことで、私たちの生活に必要な空気を作り出すことができます。また、動物たちは、生態系の食物連鎖の中で、それぞれが重要な位置を占めています。生物多様性が失われると、生態系のバランスが崩れ、地球上の生物全体に悪影響が出ることがあります。

食料や薬品などの提供源となる:生物多様性には、私たちが生活する上で必要な食料や薬品などの提供源が含まれています。例えば、植物からは食料や薬品の原料が取れます。また、動物からは肉や乳製品、皮革や毛皮などが得られます。

自然環境の美しさを保つ:生物多様性は、自然環境の美しさを保つうえでも非常に重要です。多様な種類の生物が共存することで、自然環境に豊かな色彩や音が生まれます。

しかし、現代の人間活動によって、生物多様性は失われつつあります。森林伐採や土地の開発、環境汚染などが原因です。生物多様性を守るためには、私たちが持続可能な生活を送り、地球環境を保護することが必要です。

今回発表された生物多様性国家戦略には「生物多様性損失」と「気候危機」への統合的対応が必要だということが強調されており、そのために必要な考え方として「ネイチャーポジティブ経済」という言葉が登場します。

ネイチャーポジティブ経済とは、経済活動を行う上で自然環境を壊さずに、むしろ自然環境を回復・保全することで、経済成長を実現する経済モデルのことです。

現在の経済活動には、地球上の自然環境に多大な負荷がかかっており、地球温暖化や大気汚染、生物多様性の喪失などの環境問題が深刻化しています。これらの問題を解決するために、ネイチャーポジティブ経済では、自然環境を維持しながら、経済活動を行うことが求められています。

ネイチャーポジティブ経済では、自然資本を大切にし、経済成長を実現することで自然環境を回復・保全することができます。例えば、森林や海洋などの生態系サービスを保全することで、地球上の生態系を守ることができます。また、再生可能エネルギーを利用したり、リサイクルを推進したりすることで、環境に配慮した経済活動ができます。

ネイチャーポジティブ経済は、今後ますます注目される経済モデルの一つとして、世界中で取り入れられるようになっています。

このマインドマップは、生物多様性に関する問題を3つの視点から示しています。

まず、生物多様性損失という視点では、野生生物の数が減ってしまったり、絶滅が危惧される種の数が増えてしまったり、生息地が破壊されたり、環境汚染によって生態系が損なわれてしまうなどの問題があります。

次に、気候危機という視点では、地球温暖化によって海面が上昇してしまったり、気候変動によって生態系に悪影響が及んでしまったり、熱帯地域での生態系が変化してしまうなどの問題があります。

最後に、ネイチャーポジティブという視点では、自然環境を回復させたり、保全したりすることや、資源の持続的な利用を促進すること、そして環境に優しいインフラの整備を行うことなどが重要であるということが示されています。

ネイチャーポジティブに積極的に取り組んでいる企業として、グローバルな食品会社のネスレが挙げられます。
ネスレは特に農業分野において、「リジェネラティブ農業」とも呼ばれる取り組みを推進しています。
これは農地の土壌を修復・改善しながら自然環境の回復に繋げる農業のことで、「環境再生型農業」とも呼ばれています。

2019年には「ネスレ共通の農業目標」を策定し、2025年までにネイチャーポジティブな農業を実現することを目指しています。

再生農業(ネスレサイト)

ネスレは、おもに以下のような取り組みをしています。

水の持続可能な利用
ネスレは、農業での水の使用量を削減することで、水ストレスの軽減を目指しています。具体的には、灌漑方法の改善や、地下水の適切な管理を行うなどの取り組みを進めています。

気候変動に対する適応と軽減
ネスレは、温室効果ガスの排出量を削減することで、気候変動に対する貢献を目指しています。具体的には、農業生産プロセスの見直しや、再生可能エネルギーの利用促進などの取り組みを行っています。

土地利用の持続可能性
ネスレは、持続可能な農業を実現するために、土地利用の見直しを進めています。具体的には、森林破壊の防止や、土地の適切な回復、土地の適切な管理に関する取り組みを行っています。

生物多様性の保全
ネスレは、生物多様性の保全に向けて、森林や湖沼、川などの環境を保護し、復元することで取り組んでいます。具体的には、森林の再生や保護、海洋生態系の保全、バイオダイバーシティの確保に向けた活動などを行っています。

以上のように、ネスレは、ネイチャーポジティブな農業を実現するために、様々な取り組みを進めています。

そのほかネイチャーポジティブに取り組んでいる企業として、以下のような代表例があります。

Unilever
Unileverは、2010年に自社の製品の環境影響を測定する手法を開発し、2015年にはネイチャーポジティブに向けた取り組みをスタートしました。具体的には、2025年までに、自社の製品の生産において、二酸化炭素排出量を半分に削減し、自社製品に使われる原材料の100%をサステナブル(持続可能)なものに置き換えることを目指しています。また、自社製品の消費によって生じる森林破壊を防止するため、森林保全にも取り組んでいます。

Patagonia
Patagoniaは、アメリカ合衆国のアウトドア用品メーカーです。同社は、製品の素材選定から、生産、販売に至るまで、環境に配慮した取り組みを行っています。例えば、同社の製品に使われる素材は、リサイクル素材やオーガニックコットンなど、環境に配慮したものが多く、また、製品の生産に際しては、化学物質の使用を最小限に抑え、従業員の福利厚生にも力を入れています。

IKEA
IKEAは、世界中に展開する家具・インテリア用品の販売企業です。同社は、ネイチャーポジティブに向けた取り組みの一環として、再生可能エネルギーの導入を進めています。具体的には、2020年には、自社のエネルギー需要のうち、約50%を再生可能エネルギーで賄っています。また、森林保護活動にも取り組んでおり、自社製品の材料調達に伴う森林破壊の抑制に力を入れています。

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